財産分与の基礎知識

財産分与とは、婚姻中に夫婦が協力して築いた財産を分ける事です。
原則的な考え方は、財産分与は夫婦が婚姻中に築き上げた財産を二分の一に分割して、夫婦関係を清算するということです。
 
実務では以下のような項目を考慮して財産分与の内容を決めます。

・婚姻中の夫婦共同財産の生産(清算的財産分与) 
・離婚後の弱者に対する扶養(扶養的財産分与) 
・離婚による慰謝料(慰謝料財産分与) 
・過去の婚姻費用に対する清算(過去の婚姻費用の清算) 

清算的財産分与

夫婦の共有財産を清算します。自宅が夫名義になっていても、当然財産分与の対象となります。
もちろん妻が専業主婦だとしても財産分与が成立します。なぜなら、妻の内助の功(育児や家事)を夫の労働と同視するからです。

扶養的財産分与

慰謝料や清算的財産分与だけでは、離婚後の生活に大きな不安が残る場合に、生活費を援助する目的で行われる財産分与です。

慰謝料的財産分与

本来、慰謝料と財産分与は別ですが、2つの論点はとも金銭であるために、一緒に行われる場合があります。そういったときに合意された「慰謝料を含む財産分与」のことを指します。

過去の婚姻費用の清算

離婚が成立するまでに支払われていなかった婚姻費用(生活費)の清算が財産分与で行われるものです。

以上のように、財産分与は異なる4つのタイプが存在します。

財産分与は夫婦の事情によって全く異なるので難しい判断となります。

それから、次は清算の割合(寄与度)をどのようにするかが問題となります。
多くの判例では、夫婦がその財産の形成にどれだけ貢献したかによって割合を決定しています。それでは、ケース別に3つの夫婦の場合に分けて、見てみましょう。

共働き夫婦の場合

この場合は、夫婦の収入の差が寄与度の差とはならずに、原則として二分の一とされる例が多いようです。
 
実際に働いて得た収入に極端な差があるような場合、つまりパート職と専門職(医師や弁護士などの国家資格)能力に著しい差がある場合、実働時間に極端な差がある場合には、具体的な寄与度に応じて割合が決まります。 

夫婦で家業に従事する場合

家業の営業にどれだけ寄与しているか、具体的な寄与度に応じて割合が決まりますが、基本的には二分の一とされる例が多いようです。自営業で、事業の運営が夫の手腕であるなどの場合には、妻の寄与度は二分の一以下とした判例もあります。 

専業主婦の場合

実際の裁判例では、大部分が3割から5割の範囲内で、家事労働の財産形成への寄与度により判断されています。
 
5割の寄与度を認めたものとしては、不動産等を購入したときに妻も現金を出したり、妻の離婚後の生活に対して扶養的な要素を考慮したなど、特殊な要因を加味した場合です。

さて、最後に財産分与の対象となる財産を確認しましょう。

現金・預金

金額が明確ですから問題はありません。 

不動産(土地、建物)

不動産については、国家資格者である不動産鑑定士に頼んで鑑定してもらえば、正確な査定ができますが、鑑定に要する費用も掛かります。
 
財産の評価については定めはありませんので、客観的にみて合理的と思われる方法、たとえば路線価、公示価格、購入時の価格などをひとつの目安と考えましょう。 
 

動産(家財道具、車など)

評価をしておよその価格を出す方法もありますが、現物を分け合う方法が主流となっています。 

ゴルフ会員権

高額であることから投資目的で購入されることも多いですが、購入に際して預貯金を出している場合は、夫名義でも当然財産分与の対象資産となります。 

生命保険金

離婚前に満期がとなっている生命保険金は、受取人がどちらでも夫婦の共有財産として対象になります。
一方で、保険料支払い中の場合は、不確定要素の多いことから、共同財産にはできないというのが判例です。 

営業用の財産

夫婦が共同して事業を行っている場合は、たとえ夫が事業主であっても、夫婦が協力をして築き上げたものですので、財産分与の対象となります。 

退職金

退職金は夫婦の協力による共有財産として、清算の対象となります。
 
しかし、離婚が夫の退職前、退職間近である場合、つまり不確定要素があるので対象とするにはどうかという保険金と同じ根拠に基づく意見も根強いのですが、妻の将来の生活不安を考慮して、清算の対象とした判例もあります。 

年金・恩給

年金や恩給も保険金、退職金と同様に、支給の確定している分については、清算の対象となります。離婚時に支給の確定していないものについては、不確定要素が多いという理由で清算の対象としては認めないとするのが判例です。 

婚姻費用

別居が長期に及んだ場合、その間の妻の生活費は婚姻費用の分担として夫に請求できます。過去に支払われなかった婚姻費用は、財産分与として請求できるとするのが判例です。

債務(借金)

自分のための個人的な債務は、清算の対象にはなりません。
しかし、共同生活していく上で生じた生活のための債務は、夫婦共同の債務として財産分与の対象となります。

離婚の財産分与請求権の時効

なお、離婚が成立した日から2年以内に請求しなければ財産分与を請求することはできません。

※離婚が成立した日とは、協議離婚では離婚届が受理された日、調停離婚では調停が成立した日、審判離婚では審判が確定した日、裁判離婚では判決が確定した日です。

基本的には離婚後も時効にかからなければ請求できます。
 
しかし、財産分与を決めずに離婚するのは危険なことです。というのも、一度離婚が成立すると、相手方は感情的に離れて、配偶者のことがどうでも良い存在つまり、他人へ戻ってしまいますので、財産分与の話合いに応じず、応じたとしても額を低く値切られることがあります。
ですから、財産分与を請求するのであれば、離婚が成立する前に請求するべきです。

また、財産分与が決まるまでに時間が掛かってしまうと、相手が勝手に財産を処分したり、売却する恐れもあります。
このようなケースでは、権利としては請求できても 実際問題として実現できなくなることがあります。
このような場合には、財産分与の中でも、不動産に一番詳しい司法書士などの専門家に相談することをお勧めいたします。

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