1.資本金の変更の登記手続きの変更点
旧商法では「新株発行」といっていましたが、会社法では自己株式の処分と併せて「募集株式の発行」と変更されました。主な変更点は下記のとおりです。
①募集事項の決定
募集事項に関する決議機関は、取締役会の権限でしたが、会社法では原則として株主総会の権現(特別決議)になりました。また、株式の譲渡制限のある会社では募集事項の決定時に株主に割当てを受ける権利を与えることができるとされました。
②現物出資について
現物出資においては、その目的価格の証明が必要な場合に裁判所選任の検査役の調査や、弁護士等の証明が必要でした。しかし、会社に対する貸付債権等の金銭債権を出資する場合には、履行期が到来しておりかつ当該債権額以下で現物出資する場合は上記のような調査が不要になりました。よって、以前は500万円毎に分けて増資登記の手続をしていたのが、今はいくらでも一度で登記申請ができるようになりました。
③払込期間
出資者が株主となる時期について、旧商法では払込期日に払い込むことでこの日に株主の地位を得ていました。しかし、会社法においてはこの払込期日に加えて払い込み期間を定めることができ、この期間内に払い込めばその日に株主となります。
会社の資本金の額は、株式の発行による資本金の額の増加のほか、準備金または剰余金の額を減少する場合に限り、増加することができます。また、資本準備金またはその他資本剰余金の額を減少する場合だけに限らず、利益準備金またはその他利益剰余金の額を減少する場合も、資本金の額を増加することができます。
手続き面では、旧商法において「準備金の資本組入れ」、「利益の資本組入れ」とされてたものが、会社法では「準備金の減少による資本金の額の増加」、「剰余金の額の減少による資本金の額の増加」と整理されました。
①準備金の減少による資本金の額の増加
会社は、株主総会の普通決議により準備金を資本に組み入れることができます。この場合、次の事項を当該総会にて定める必要があります。
Ⅰ 減少する準備金の額
Ⅱ 減少する準備金の額の全部または一部を資本金とするときはその旨及び資本金とする額
Ⅲ 準備金の額の減少が効力を生ずる日
この場合、減少する準備金の全額を資本金とする場合を除き、官報公告などの債権者保護の手続きを必要とします。
②会社は、株主総会の普通決議により剰余金の額を減少して資本金の額を増加することができます。この場合、次の事項を当該総会にて定める必要があります。
Ⅰ 減少する剰余金の額
Ⅱ 資本金の額の増加がその効力を生ずる日
この場合、債権者の利害に影響を与えないことから、債権者保護手続きは不要です。
会社は、原則として株主総会の特別決議で下記の事項を定めることにより、会社の資本金の額を減少することができます。
Ⅰ 減少する資本金の額
Ⅱ 減少する資本金の額の全部又は一部を準備金とする時はその旨及び準備金とする額
Ⅲ 資本金の額の減少が効力を生ずる日
この場合、減少する資本金の額は、資本金の減少が効力を生ずる日における資本金の額を超えてはならないとされています。
また、会社が資本金の額を減少するのと同時に株式の発行を行う場合には、資本減少が効力を生ずる日後の資本金の額が、当該日前の資本金の額を下回らない場合、株主総会の決議に代えて取締役の決定(取締役会の決議)によることができます。
なお、資本金の額の減少は、会社債権者の利害が生ずることなので、債権者保護手続きが必要となります。