Q&A

お客様から届くよくある質問をまとめました。

司法書士とは

司法書士はどのような業務を行っているのでしょうか?

司法書士は、登記や供託の代理、裁判所や検察庁、法務局に提出する書類の作成などを行う国家資格です。また、法務大臣の認定を受けた司法書士は、簡易裁判所が管轄する民事事件において本人を代理して訴訟業務を行うことができるとされています。
司法書士が行っている業務は、主に以下のような業務です。

a不動産登記に関する業務

不動産登記とは、土地や建物の物理的状況や権利関係を、法務局に備えられた登記記録に記録する制度です。
その中でも、司法書士が代理して行う不動産登記は主に土地や建物の権利関係に関するもので、土地や建物を売買したり贈与したときの所有権移転登記、親が亡くなって土地や建物を相続したときの所有権移転登記、家を建てたときの所有権保存登記、登記記録上の住所や氏名が変わったときの変更登記、銀行でローンを組んだときの抵当権設定登記、ローンを返済し終えたときの抵当権抹消登記などがあります。
不動産売買を例にあげると、通常、不動産の取引は不動産業者を介して、土地や建物を売りたい方と、買いたい方が不動産売買の契約を結びます。その後、決済日に売買代金の授受を行い、不動産の引渡し後に登記の申請を行います。その際司法書士は、契約書作成や契約時立会に同席し、間違いなく不動産の名義が書き換えられることを確認します。
このように、司法書士は、個人の大事な財産である不動産に関し、取引の一連の流れに関与することで、不動産取引の安全をはかっています。

b商業登記・法人登記に関する業務

商業登記・法人登記とは、一般の方々が世の中に数多く存在する会社や法人等と安心して取引ができるように、会社等に関する取引上重要な事項(商号・名称、本店所在地、資本金の額、事業目的、代表者の氏名など)を法務局に備えられた登記記録に記録する制度です。
新たに会社・法人を設立したり、本店所在地や事業目的・役員などの重要事項に変更が生じた場合には、その旨の登記を一定期間内に法務局へ申請することが義務付けられています。
その際、司法書士は依頼を受けて登記申請手続に必要な書類を作成し、代理して登記申請手続を行うだけでなく、どのような種類の会社が依頼者にとって望ましいか、定款(その会社のあり方に関する基本的なルール)をどのように定めるべきかなど、会社・法人に関するさまざまアドバイスを行っています。

c成年後見に関する業務

成年後見制度とは、認知症などの理由で判断能力が不十分となり、自分の財産管理などが十分に行えない方のために、本人にかわって財産を保護し支援する人を選任する制度で、大きく次の2つの制度からなります。
1法定後見制度
様々な事情で判断能力が不十分となり、自らの財産を管理処分することが困難な方のために、その判断能力の段階に応じて①後見人②保佐人③補助人を家庭裁判所が選任し、家庭裁判所の監督の下、本人の生活や財産管理等を支援する制度です。
2任意後見制度
現時点で既に判断能力が不十分となっている場合に利用される法定後見制度とは異なり、「現在は自分の判断能力に問題はないが、将来はどうなるかわからず不安がある」というような場合に、今のうちに将来の後見人や支援の内容を決めておくという制度です。
任意後見制度は、本人と自らが選んだ将来の後見人との間の「契約」であり、その契約は公正証書によってなすこととされています。
司法書士は、後見が必要な方やそのご家族からのご相談・ご依頼を受け、家庭裁判所に提出する申立書類等の作成、任意後見契約書の作成、または後見人、保佐人、補助人への就任などといった業務を行っています。

d相続・遺言に関する業務

司法書士は、相続による不動産の名義変更(相続登記)の申請や、その登記申請に先立っての相続人の調査(戸籍の収集や相続関係説明図の作成)・遺産分割協議書の作成を行っています。
また、遺産の中身が財産よりも負債の方が多いという場合などの相続放棄、相続人の中に行方不明者がいる場合の不在者財産管理人の選任申立、遺産相続で争いになった場合の遺産分割調停の申立など、相続手続きにあたり家庭裁判所への申立が必要な場合、裁判所へ提出する書類の作成も行っています。
さらに、遺言(自筆証書・公正証書)の作成に関する相談・文案の作成や、自筆証書遺言の検認申立、遺言執行者を選任する手続に関する書類の作成といった、遺言に関わる業務も行っています。

e裁判に関する業務

司法書士は、裁判所(地方裁判所、簡易裁判所、家庭裁判所など)に提出する書類を作成することを業務としています。ここでいう「裁判所に提出する書類」とは、民事訴訟をするために必要な訴状や準備書面、民事調停を利用するために必要な申立書など、民事紛争に関するもののほか、相続放棄や成年後見に関する申立書など、家庭内の問題に関するものも含まれます。支払督促や強制執行にかかわる書類も作成します。

また、法務大臣の認定を受けた司法書士は、簡易裁判所において取り扱うことができる民事事件(訴訟の目的となる物の価額が140万円を超えない請求事件)等について、当事者の代理人となって業務を行うことができます(簡裁訴訟代理等関係業務)。
司法書士の業務と、弁護士・行政書士・土地家屋調査士・税理士の業務とはそれぞれどのように異なるのでしょうか?

【弁護士】

弁護士は法律相談、和解・示談交渉、民事及び刑事の訴訟事件、離婚などの家事事件や行政庁に対する不服申立等の法律事務など、社会生活上の「事件」や「紛争」に対し、適切な対処方法や解決策をアドバイスする法律の専門家です。司法書士と異なり、訴訟の目的となる物の価額が140万円を超える事件についても本人を代理することができますので、あらゆる法律問題に関する相談や手続が可能です。

【行政書士】

行政書士は自治体や警察署等に提出する書類(営業許可申請や自動車登録など)や、その他権利義務又は事実証明に関する書類を作成することを主な業務としています。両者とも名前に「書士」と付くため混同されがちですが、司法書士が法務局に登記申請を行ったり、裁判所へ提出する書類の作成などを行っているのと比べると、行政書士の業務は大きく異なると言えます。

【土地家屋調査士】

土地家屋調査士は不動産の表示に関する登記について必要な土地又は家屋に関する調査又は測量を行います。不動産の登記記録は大きく、不動産の物理的状況を示す「表題部」と、不動産の権利関係を示す「権利部」という部分に分けられており、そのうち表題部の登記を土地家屋調査士が担っており、権利部の登記を司法書士が担っています。土地家屋調査士と司法書士の業務は切っても切れない関係にあり、お互いが連携しあうことによって不動産登記制度が運用されています。

【税理士】

税理士は納税者を代理して税務署に対して税金の申告を行うこと、それに付随して申告書類の作成や税に関する相談を主な業務としています。司法書士と税理士の業務内容は大きく異なりますが、たとえば相続手続きにおいては、不動産の相続登記と相続税の申告・納付の両方が必要となるケースもあるため、司法書士と税理士が連携して相続手続きを進めていくということも多くあります。

土地や建物に関する登記

不動産登記とはどのようなものですか?

不動産登記とは、不動産取引の安全を守るため、不動産の物理的状況と権利関係を、法務局に備え付けられた不動産登記記録(不動産登記簿)に記録することをいいます。この記録内容は、登記事項証明書(登記簿謄本)等の交付を受けることで、誰でも確認することができるようになっています。
不動産登記は、「表示に関する登記」と「権利に関する登記」の2種類に分かれます。
表示に関する登記は、土地であれば、所在・地番・地目(宅地や田、山林など土地の種類)・地積(面積)、建物であれば、所在・家屋番号・建物の種類(居宅や店舗、工場など)・構造(木造平家建や鉄筋コンクリート2階建など)・床面積など、その不動産の物理的状況に関するものであり、登記事項証明書の「表題部」とよばれる箇所に記載されています。

一方、権利に関する登記は、その不動産の所有者がどこの誰であるか、いつどのようにどんな権利を取得したか、金融機関等の抵当権がついている場合はその内容など、その不動産の権利関係に関するものであり、登記事項証明書の「権利部」とよばれる箇所に記載されています。なお、権利部のうち、「甲区」には所有権に関することが、「乙区」には所有権以外の権利に関することが記載されています。
どうして、土地や建物を購入した時に登記をしたほうがいいのですか?

民法上、所有権の移転は当事者の意思表示のみで行うことができ、対象となる財産を実際に引き渡したかどうかは問題とされていません。例えば甲(買主)が乙(売主)所有のA不動産を購入する場合、甲と乙の間で「A不動産をいくらで売買する」という合意があれば、A不動産の所有権は買主である甲に移るということになります。
しかし、売買の合意というのは外形的に甲・乙以外の第三者にはわからないものです。とすると、売主である乙はその気になれば、まだA不動産を甲に引き渡していない段階で「A不動産は自分(乙)の所有である」と偽って丙(他の買主)にもA不動産を売り渡すということができてしまいます。そうすると、甲と丙の間でどちらがA不動産の所有者であるのか争いが起こってしまいますし、場合によっては不動産の所有権を取得できなかったのにもかかわらず既に支払っていた売買代金も戻ってこなかったということにもなりかねません。

そのため、土地や建物を購入した際には、買主はすぐに所有権移転登記をすることでその不動産の権利関係を明確にする必要があるのです。その後、その不動産を購入しようとする人は、その不動産の登記記録を閲覧することによって現在の所有者を確認し、安心して真の所有者と取引をすることができるような仕組みになっているのです。
土地を買う際にはどのような登記や手続きが必要になりますか?

不動産売買契約を結び、買主が土地代金を支払った後、売主は印鑑証明書・実印・登記識別情報(登記済証)及び対象不動産の固定資産評価証明書を、買主は住民票・印鑑を用意して、売買を原因とする「所有権移転」の登記申請を行います。
その際、売主の印鑑証明書上の住所が、その土地の登記事項証明書に記載してある売主の住所と異なる場合には、別に「所有権登記名義人の住所変更」登記申請も必要となります。
さらに、土地の購入資金を金融機関からのローンでまかなう場合には、通常はその借入金を担保するためにその土地に抵当権を設定するケースがほとんどですので、「抵当権設定」の登記申請も必要となります。
なお、購入する土地の登記記録上の地目が田畑の場合は、他に手続きが必要になることがあります(農地法3~5条の許可申請等)。

このように、土地を買う場合、所有権移転登記以外にも場合によっては様々な登記やその他手続きが必要になることがあります。
建物を新築した場合、どのような登記が必要になりますか?

建物を新築したときは、初めに建物の表示に関する登記(表題登記)を行います。これは、建物の所在・家屋番号・建物の種類・構造・床面積などといった建物の物理的状況を公示するための登記で、土地家屋調査士が本人を代理して登記を申請します。
建物の表題登記完了後、「所有権保存登記」を行うことで、その建物の所有権を誰に対しても主張することができるようになります。
また、建物の建築資金を住宅ローンでまかなった場合には、通常はその借入金を担保するために建物と敷地に対して抵当権設定の登記をするケースがほとんどだと思われます。

この所有権保存登記や抵当権設定登記は、司法書士が本人を代理して登記を申請します。
亡くなった父親名義の不動産を相続したいと考えている場合、どのような手続きが必要になりますか?

まず、父親が遺言を作成しているかどうかによって、手続きが大きく異なります。
①父親が法的に有効な遺言を作成していて、不動産を誰に相続させるかについての指定がある場合には、指定された相続人がその不動産を相続します(場合によっては、自筆証書遺言の検認手続きを家庭裁判所に申し立てる必要があります)。その遺言書と、関係する戸籍や住民票などの書類を添付して、相続を原因とする所有権移転登記(相続登記)を行います。
②父親が遺言を作成していない場合は、父親名義の不動産は、父親が死亡した時点でいったん相続人全員が法定相続分に基づいて共有することになります。そして、戸籍や住民票などの書類を添付して、この共有状態のままで相続登記を行うこともできます。この場合、必ずしも相続人全員で登記を申請する必要はなく、相続人のうちの一人が単独で共有者全員分の申請を行うことができます。

もっとも、実際のところ、不動産を相続人全員で法定相続分どおりに共有するケースはほとんどありません。たいていは、その不動産や現金・預貯金・有価証券などの遺産を、誰がどのように相続するかの話し合い(遺産分割協議)を相続人全員で行い、「A不動産は甲が相続する」と合意するケースがほとんどです。そして、その合意内容を「遺産分割協議書」に記載し、相続人全員が署名・押印をした後に、その遺産分割協議書と、関係する戸籍や住民票、印鑑証明書などの書類を添付して相続登記を行います。この場合は、当該不動産を相続する人が登記を申請することになります。
金融機関から借り入れをする際の「抵当権設定登記」とはどのようなものですか?

抵当権設定とは、住宅ローンなどで金融機関からお金を借りた際に、建物や土地に担保権を設定することです。債権者(金融機関等)は、債務者からの住宅ローンの返済が滞り、返済が困難であると判断すると、所定の手続きのうえ、担保権が設定された建物や土地を競売にかけ、他の債権者に優先して住宅ローンの回収をはかることができます。抵当権の設定をすることを、「抵当権設定登記」といいます。建物や土地の競売代金でなお住宅ローンを完済できない場合には、残りの借入金について債務者の支払義務は当然残ることになります。
登記の申請にあたっては、抵当権設定契約書・登記識別情報(権利証)・印鑑証明書・司法書士への委任状などが一般的に必要となります。

抵当権設定登記が完了すると、不動産登記記録の乙区に、抵当権設定日・住宅ローン契約締結の原因・債権額(借入金額)・利息・損害金・債務者の住所や氏名・債権者の住所や氏名などが記載されます。
金融機関から借りていた住宅ローンを完済した場合、どのような手続きが必要になりますか?

住宅ローンを借りて購入・新築した土地や建物にはたいてい抵当権が設定されていますが、住宅ローンを完済すると同時に抵当権も消滅します。しかし、不動産登記記録上の抵当権の記載が自動的に消滅するわけではないため、きちんと「抵当権抹消登記」を行う必要があります。
住宅ローンを完済すると、金融機関等から抵当権登記を抹消するための書類が送られてきます。そして、抵当権が設定されている土地や建物の所有者と金融機関等の両者で、抵当権抹消の登記申請を共同して行います。いつまでに抵当権抹消登記を行わないといけないという決まりはなく、また、抵当権の記載が残っていたからといって金融機関から不動産を競売にかけられるわけではありませんが、金融機関から送られてくる書類には有効期限が設定されている場合があるため、早めに抵当権の抹消登記を行っておいたほうがいいでしょう。

登記の申請にあたっては、登記識別情報(抵当権を設定した際に金融機関に交付されたもの)・抵当権解除証書・金融機関からの委任状等が必要になります。
住所が変わったのですが、不動産について何か登記をする必要はありますか?

不動産を所有している人の住所が変わった場合、市区町村役場に住民票の移転を提出しても不動産登記記録上の住所が自動的に変更されるものではないため、自ら住所の変更登記申請を行う必要があります。また、不動産に住宅ローンなどで抵当権が設定されていて、その債務者として登記されているのであれば、債務者の住所変更登記も申請する必要があります。その際、所有者の住所変更登記は所有者が単独で申請できますが、債務者の住所変更登記は金融機関と債務者との共同申請となります。

登記申請の際には、不動産登記に記録されている住所から現在の住民票上の住所までの経緯がわかる書類(現在の住民票・戸籍の附票など)が必要になります。
農地の名義を変更したいのですが、注意しなければならないことはありますか?

農地法上、農地について耕作目的で所有権を移転する場合には農業委員会の許可が必要とされています。その場合、譲受人はその農地を含めて合計で一定以上の農地面積を有している農家でなければ許可はおりません(どれだけの面積が必要かについては、自治体によって異なります)。
農地以外に転用する目的を持って所有権を移転する場合や、自分の所有名義の農地を農地以外に転用する場合は、都道府県知事等の許可が必要です。この場合、農業振興地域の農用地区域内の農地(いわゆる青地)では、農地以外の土地利用が厳しく制限されており、農地転用が許可されません。それ以外の農地(いわゆる白地)であった場合でも、農地区分によっては青地と同様に転用が原則的に許可されず、その点をクリアしたとしても、さらに転用目的の正当性や転用事業が確実に行われる・周辺の農地に悪影響を与えないなどの基準を満たさなければ許可は下りません。
ただし、市街化区域内にある農地については、農地転用のハードルが低くなっており、許可ではなく農業委員会への届出によって転用をすることができます。さらに、相続・遺産分割・包括遺贈・時効取得などにより農地を取得する場合も、都道府県知事の許可なしに名義を変更することが可能です。

このように、農地の名義変更や農地の転用については、農地法上大きな制約があることに注意しなければなりません。

商業登記

商業登記とはどのようなものですか?

世の中には数多くの会社や法人が存在しています。これらの会社や法人の本店所在地や資本金の額・事業内容・代表者名などの情報は、法務局の商業登記記録で管理されています。
ある会社についての情報を知りたい場合には、その会社の商業登記の内容を記載した文書(登記事項証明書)の発行を法務局に請求することによって、誰でも調査をすることができます。そのように調査をすることによって、「全く存在しない架空の会社と取引をして大金を騙し取られた」「会社自体は実在するが、代表権を持たない者と取引をしてしまい取引が無効になった」などといった事態を未然に防ぐことができるようになるのです。
そして、商業登記の記載内容の信頼性を保つため、会社法上、会社が本店を移転したり、事業目的を追加したり、役員に交代が生じた場合など、登記事項に変更が生じた場合には、その旨の変更登記を2週間以内に申請するよう定められており、破った場合、過料が課されることとなっています。

会社を設立する場合、どのような手続きが必要となりますか?

株式会社を設立する場合を例に挙げると、発起人はまず最初に、商号や事業目的・本店所在地・資本金など、会社を運営する上での基本規則を定めた「定款(ていかん)」を作成しなければなりません。定款に必ず記載しなければならない内容(絶対的記載事項)は会社法で定められています。
定款を作成したら公証人の認証を受け、会社の資本金となるお金を準備し発起人代表の口座に入金します。そして、発起人全員の話し合いにより会社の役員や具体的な本店所在場所などを定めたら、所定の事項を記載した会社の設立登記申請書を法務局に提出する必要があります。
その際、定款・資本金の払込証明書・発起人の決定書(具体的な本店所在地を発起人の過半数で定めたもの)・設立時役員の就任承諾書・役員の印鑑証明書・印鑑届書(会社の実印を登録するもの)などの書類を添付する必要があります。

株式会社はどのような仕組みになっているのですか?

株式会社とは、会社の経営に必要な資金を出す人(=株主)と、実際に会社を経営する人(取締役)が、必ずしも一致しない形態の会社をいいます。
株主は、自分が出資した会社が倒産してしまった場合、出資した金額が戻らなくなることにはなりますが、原則として会社の債権者から会社の債務について直接弁済を求められることはありませんので、不特定多数の人から出資を募り多くの資金を集めやすい会社の形態となっています。
従来は、株式会社を設立する場合には、取締役最低3名・監査役最低1名が必要で、資本金も1000万円以上が必要でした。しかし、平成18年に会社法が施行されてからは、取締役1名、資本金1円でも、株式会社が作れるようになりました。また、取締役会や監査役を設置するかどうかや、発行する株式の種類などについても、さまざまな選択ができるようになりました。

合同会社とはどのような会社ですか?

合同会社とは、平成18年に会社法が施行されてから、新たに設立が認められるようになった会社の形態です。
出資者(社員)1名、資本金1円でも会社を設立できる点や、自分が出資した会社が倒産してしまった場合、出資した金額が戻らなくなる以上の責任は会社の債権者に対して原則として負わないという点では、株式会社と共通しています。
一方で、基本的には出資者自ら会社の経営にあたる点や、役員の任期に制限がない点、決算公告の義務がないという点では、株式会社とは異なっています。
合同会社は、会社経営や利益配分のルールを出資比率とは無関係に決められるなど、株式会社よりも経営の自由度が高いというメリットがあります。さらに、設立の際の手続きも公証人による定款認証が不要になるなど簡素化されており、設立登記の際に必要な登録免許税も株式会社の最低15万円に対して合同会社では最低6万円と安くなっています。しかしながら、会社経営のルールが出資比率と無関係であるため出資者(社員)同士の対立が起きやすい、株式の増資などといった大規模な資金調達方法がない、などのデメリットもあります。
これから会社の設立をお考えの方は、株式会社がいいのか、それとも合同会社がいいのかについて、ぜひ一度司法書士にご相談下さい。

一般社団法人とはどのような法人ですか?

一般社団法人とは、例えば、同窓会やボランティア団体など一定の目的のために集まった非営利団体(ここでいう「非営利」とは、「利益を社員に分配しないこと」を指し、「利益をあげること」自体を禁じるものではありません)に、法律で会社と同じように法人格を認めたものです。
従来は、公益を目的とした法人でなければ「社団法人」を名乗ることができませんでしたが、現在では必ずしも公益を目的としたものでなくとも設立が認められるようになりました。また、設立の際には従来必要であった主務官庁の許可も不要となり、法務局への登記だけで設立が可能になりました。
なお、ボランティア団体が法人となる手段としては、他にも「NPO法人(特定非営利活動法人)」があります。NPO法人では事業の目的に制限があり、設立には都道府県知事等の認証が必要で、設立後も監督を受ける代わりに、税金の面では優遇を受けることができます。これに対して、一般社団法人では、原則として事業の目的に制限はなく、監督官庁もない代わりに、そのままでは税制上の優遇措置は受けられない(税制上の優遇を受けるには、公益認定という手続きを経て「公益社団法人」となる必要があります)という違いがあります。

会社の役員(代表取締役、取締役、監査役)が変わる場合、どのような手続きが必要ですか?

任期満了や辞任、追加の選任などで役員が変わった場合、変更日から2週間以内に役員の変更登記を申請する必要があり、この登記を怠ると過料の請求が来ることがあります。
一般的に、取締役や監査役が退任した場合には、株主総会を開いて代わりの役員を選任することになり、退任したのが代表取締役であれば、取締役会などその会社の定款で定める方法により後任者を選任することになります。その後、株主総会議事録や取締役会議事録を作成し、就任承諾書などを添付して、法務局に役員変更登記を申請します。
なお、役員の任期が満了したが次の任期も同じ役員がそのまま就任するというような場合にもやはり役員変更登記が必要であり、「重任」と呼ばれる登記を申請する必要があります。

代表取締役の住所が変更になりましたが、この場合、登記の申請が必要でしょうか?

代表取締役の住所は登記をしなければならない事項ですので、代表取締役の住所に変更があった場合には、2週間以内に変更登記を申請しなければなりません。そして、この登記申請を怠ると過料の請求が来ることがあります。
ただし、株式会社の場合、代表取締役以外の取締役(いわゆる「平取締役」)や監査役については、住所は登記しなければならない事項ではありませんので、住所に変更があっても登記申請は必要ありません。

会社の商号・事業目的・本店を変更したいのですが、どのようにすればいいですか?

会社の商号や事業目的を変更する場合には、まず株主総会を開いて定款変更決議を行う必要があります。その後、株主総会議事録を作成し、決議から2週間以内に法務局に変更登記を申請します。
なお、商号を変更する場合は、近隣に同一商号や類似商号がないかどうかを事前に調べておくことが大切です。また、事業目的に関しても、会社の事業内容が何であるかを知り得る程度に明確に記載しなければならないとされています。
一方、本店の移転については、商号や事業目的の変更のように必ず株主総会を開いて定款変更決議を行う必要があるというわけではありません。というのも、定款では、本店所在地のうち最小行政区画である市町村まで(東京都の場合には特別区まで)を記載すればよいとされているからです。たとえば、定款に「本店を熊本市に置く」と書いてある場合、同じ熊本市内に本店を移転するのであれば、定款の変更は必要ないことになります。一方、定款に具体的な住所を記載している場合や、他の市町村に移転するような場合には、定款を変更しなければならないことになります。
このように、本店の移転の場合、定款変更が必要な場合は株主総会議事録および取締役会議事録を、定款変更が必要でない場合は取締役会議事録のみを作成して、移転日から2週間以内に法務局に変更登記を申請します。

事業の拡張に伴って、既存株主以外の第三者が出資者となる方法で資本金を増やしたいのですが、手続きはどのようにすればいいのですか?

会社が発行する株式を譲渡・取得する場合にはその会社の承認が必要となる旨定款に設定されている会社(非公開会社)においては、株主総会を開いて、誰がいくら出資するか・出資の払込期日などについて決議をとる必要があります。
そして、会社から出資者に出資の内容についての通知を送り、出資者は会社に出資の申込みを行った後に会社の口座に出資金の払い込みを行います。
その後、払込期日から2週間以内に、株主総会議事録・払込証明書・資本金額の計上に関する証明書・募集株式申込書などの必要書類とともに、資本金の変更登記を申請しなければなりません。

資本金を減らしたいのですが、手続きはどのようにすればいいのですか?

資本金を減らす場合には、株主総会を開いて、減少する資本金の額・減少する資本金の額のうち準備金として積み立てたい金額があればその額・資本減少の効力発生日についての決議が必要となります。
その後、債権者への通知や公告などの債権者保護手続きが必要になります。公告は官報で1ヶ月以上の期間をおいて、減少する資本金の額など株主総会で決議した事項を掲載します。また、知れている債権者には個別に催告をする必要があります。公告や催告後に、債権者から資本減少について異議が出た場合は、弁済をするか、または担保を立てるか相応の対応を取らなければなりません。
資本減少の効力は株主総会で決議した日に発生しますが、その日までに債権者保護手続きが完了していなかった場合は保護手続きが完了した日に効力が発生します。
資本減少の効力が発生してから2週間以内に、株主総会議事録・債権者保護手続きを行ったことを証する書類などの必要書類とともに、資本金の変更登記を申請しなければなりません。

別の会社を合併して一つの会社にする場合、どのような手続きが必要ですか?

合併には、一方の会社が他方の会社を吸収する「吸収合併」と、二社以上の会社が一つになって新しい会社を作る「新設合併」があります。どちらの場合も、基本的には合併契約書を作成し、それぞれの合併当事会社が株式会社である場合には株主総会の承認を得る必要があります。合併契約書には、法律が定める一定の基本事項を定めなければならず、この記載を欠くときは合併の無効の原因となる場合があります。
合併契約書の承認後、債権者への通知や公告などの債権者保護手続きが必要になります。公告は官報で1ヶ月以上の期間をおいて行い、また、知れている債権者には個別に催告をする必要があります。公告や催告後に、債権者から合併について異議が出た場合は、弁済するか、または担保を立てるか相応の対応を取らなければなりません。
合併の効力が発生してから2週間以内に、合併契約書・株主総会議事録などの必要書類とともに、存続(もしくは新設)する会社については変更登記(もしくは設立登記)、消滅する会社については解散登記を同時に申請しなければなりません。

会社分割をする場合、どのような手続きが必要ですか?

会社分割には、一方の会社が事業の一部を他方の会社に承継させる「吸収分割」と、一方の会社が事業の一部を会社分割により新しく設立する会社に承継させる「新設分割」があります。どちらの場合も、基本的には分割契約書(吸収分割の場合)または分割計画書(新設分割の場合)を作成し、それぞれの当事会社が株式会社である場合には株主総会の承認を得る必要があります。分割契約書または分割計画書には、法律が定める一定の基本事項(権利義務の承継に関する事項や会社分割の対価、効力発生日など)を定める必要があります。
分割契約書または分割計画書の承認後、債権者への通知や公告などの債権者保護手続きが必要になります。公告は官報で1ヶ月以上の期間をおいて行い、また、知れている債権者には個別に催告をする必要があります。公告や催告後に債権者から合併について異議が出た場合は、弁済するか、または担保を立てるか相応の対応を取らなければなりません。
分割の効力が発生してから2週間以内に、分割契約書(分割計画書)・株主総会議事録などの必要書類とともに、登記を申請する必要があります。

会社を解散したいのですが、どのようにすればいいですか?

まずは、会社を解散させる旨の株主総会の決議を行います。その際、通常は清算人を選任します。そして、株主総会議事録を作成し、決議のあった日から2週間以内に解散の登記を行います(清算人を選任している場合は清算人就任の登記もあわせて行うことが多いです)。
その後、債権者に対し、解散した旨の一定の通知や公告を行います(債権者保護手続き)。公告は官報で2ヶ月以上の期間をおいて行い、また、知れている債権者には個別に催告をする必要があります。
さらに、税務署や各市町村役場・社会保険事務所等官公署への解散の届け出も必要です。
会社が解散すると、取締役は代表取締役も含めてすべて退任となり、会社は清算の目的でのみ存続することになりますので、通常の営業活動はできなくなります。
清算人は、就任後遅滞なく財産目録を作成し、会社の債権を回収したり債務を弁済したり、財産を処分するなどの清算手続きを行います。清算の結果、債務をすべて弁済しても、なお財産が残るようであれば、残った財産は株主(出資者)に対して分配を行います。
こうした全ての手続きが終了し、解散した会社が債権債務の無い状態になると、清算人は清算事務報告書や決算報告書を作成し、株主総会で清算結了の承認を受けます。承認後2週間以内に清算結了の登記を申請し、登記が完了すると会社は法人格が消滅します。

事業承継について、どのような方法がありますか?

事業承継には、大きく3つの方法があると言われています。①事業主の親族に承継させる方法(親族内承継)、②古参の幹部社員など、親族ではない役員や従業員に承継させる方法、③同業他社などにM&Aで事業を譲渡する方法です。
近年、中小企業の経営者の高齢化が進行し、事業承継への関心は高まっていますが、後継者の確保が困難なケースや、事業承継対策をまったくしていなかったために親族間の相続争いに会社が巻き込まれるかたちとなり、事業の継続が困難になるケースも増えています。
特に親族内承継においては、後継者教育に時間がかかるため、経営者が元気なうちに早めに取り組む必要があります。さらに、後継者が経営をしやすくするために、親族間売買や生前贈与、遺言の作成、会社法の種類株式制度、中小企業経営承継円滑化法の民法特例や相続税の納税猶予制度などを活用し、株式や事業用資産を後継者に集中させるようにすることが重要です。一方で、後継者以外の相続人が、遺産相続で不満を抱かないように配慮する必要もあります。

後見制度について

認知症の症状が出始めた親のために成年後見制度を利用することを検討していますが、そもそも成年後見制度とはどのような制度ですか?

認知症・知的障害・精神障害などの理由で判断能力の不十分な方は、不動産や預貯金などの財産を管理したり、身の回りの世話のために介護サービスや施設への入所に関する契約を結んだり、遺産分割の協議をしたりする必要があっても、自分でこれらのことをするのが難しい場合があります。また、自分に不利益な契約であるのにうまく判断できずに契約を結んでしまい、悪徳商法の被害にあうおそれもあります。
このように判断能力の不十分な方が不利益を被らないように保護・支援するのが成年後見制度です。
成年後見制度は、「法定後見制度」と「任意後見制度」の2つに分けられます。
法定後見制度には「後見」「保佐」「補助」の3種類があり、本人の判断能力の程度によって選ぶことができるようになっています。家庭裁判所によって選ばれた成年後見人等(成年後見人・保佐人・補助人)が本人の利益を考えながら、本人を代理して契約をしたり、本人が自分で法律行為をするときに同意を与えたり、本人が同意を得ないでした不利益な法律行為を後から取り消したりすることによって、本人を保護・支援します。

任意後見制度は、今後判断能力が不十分になった場合に備えて、本人が十分な判断能力のあるうちに、あらかじめ自らが選んだ代理人(任意後見人)に、自分の生活・療養看護や財産管理に関する事務について代理権を与える契約を公正証書で結んでおくというものです。そうすることで、本人の判断能力が低下した後に、家庭裁判所が選任する任意後見監督人の監督のもと、任意後見人が本人を代理して契約などをすることによって、本人の意思を反映した保護・支援をすることが可能になります。
成年後見の申し立ては、誰ができるのでしょうか?

成年後見人等の選任の申立ては、本人・配偶者・4親等内の親族等が行うことができます。4親等内の親族とは、親や子、子の配偶者(1親等)、兄弟姉妹やその配偶者(2親等)、祖父母や、孫、孫の配偶者、甥姪、甥姪の配偶者(3親等)、いとこ(4親等)のことをいいます。
また、身寄りのいない方も成年後見制度を利用できるようにするため、市町村長にも申立てをする権限が与えられています。市町村長は、本人の「福祉を図るため特に必要があると認めるとき」に申立てを行うことができます。

成年後見人には、どのような人が選ばれるのですか?

通常は、家庭裁判所に成年後見人の選任を申し立てる際に、その候補者も一緒に記載して申し立てます。裁判所の判断で、申立書に記載された候補者が適任だと判断されると、その候補者が成年後見人として選任されることになります。

もし、その候補者が適任でないと家庭裁判所が判断し、親族で他に適任者がいない場合には、司法書士や弁護士等の法律の専門家や、福祉の専門家などの第三者が選任されることになります。親族間で争いがある場合や、本人の財産が多額な場合、本人が訴訟事件に関わっている場合などに、第三者が成年後見人として選任されることが多いようです。
裁判所から選任されて認知症の親の成年後見人に就任した場合、具体的にどういう職務があるのでしょうか?

成年後見人に就任後、まず最初に行う職務として、法務局で「後見登記事項証明書」を取得します。この後見登記事項証明書を金融機関等に提示して本人の財産調査を行い、財産目録や年間の収支予定表を作成して、その他資料とともに家庭裁判所に提出しなければなりません。
その後の成年後見人の職務については大きく分けて、①財産管理事務、②身上監護事務、③家庭裁判所への報告事務があります。
①財産管理事務には、本人の印鑑や預貯金通帳の保管・管理、保険金や年金などの受領、公共料金・税金の支払い、不動産の管理・処分、遺産分割手続きなどが含まれます。なお、本人の居住用不動産を処分(売却や賃貸など)する場合には、家庭裁判所の許可が必要とされています。
②身上監護事務とは、本人に必要な生活・介護・医療サービスを手配することです。具体的には、借家の家賃支払いや賃貸借契約の更新、介護施設の各種契約、医療機関の手続き等を指しており、後見人が直接被後見人の介護・監護をすることまでは意味していません。また、食料品や衣料品等を購入するような日常生活に関する行為については、本人が自由におこなうことができます。

③家庭裁判所は必要があれば、いつでも成年後見人に対し報告を求めることができますが、実務上は年に1回程度の報告で済むケースが多いようです。ただし、本人の居住場所等の生活環境に変化があった場合や重要な財産を処分した場合は、その都度、家庭裁判所へ報告する必要があります。 なお、家庭裁判所からの指示に従わずに、定期的な報告を怠ると、家庭裁判所から成年後見人を解任されることがあります。
成年後見人は、いつまで職務を行わないといけないのですか?
原則として、本人が亡くなるまで職務を続けなければならず、自分の勝手な都合で辞めることはできません。ただし、病気等で後見人を続けることができない等正当な事由がある場合には、家庭裁判所の許可を得て後見人を辞めることができます。家庭裁判所に辞任が許可された場合、辞任した後見人は、速やかに新しい後見人選任の申立てを家庭裁判所にしなければなりません。
父親の成年後見人をしていますが、父親が介護施設に入居するにあたり、その入居費用を捻出するために父親が住んでいる家を売却しようと考えています。何か特別な手続きが必要なのでしょうか?

原則として、成年後見人には、本人の財産を処分する権限が与えられています。
しかし、本人の「居住の用に供する」とされる建物やその敷地については、その処分に家庭裁判所の許可を受けなければなりません。「居住の用に供する」とは、現に住んでいるかどうかを問わず、今は介護施設に入居している場合でも、過去に住んでいたものも含みます。なお、「処分」とは、売却だけではなく、賃貸に出したり、抵当権を設定したりすることも含みます。

任意後見制度とはどのような制度ですか?

任意後見とは、将来、自分の判断能力が不十分になった時に備えて、特定の人に後見人として財産管理等を代わりにやってもらうことをあらかじめ契約で定める成年後見の類型の一つです。契約自体は、本人が判断能力のあるうちに、本人の意思で行います。
契約の相手方に特に制限はなく、親族の方と契約を結ぶこともできますし、司法書士等の法律の専門家と契約を結ぶ場合もあります。十分に検討して自分のことを安心して任せられる人と契約を結ぶべきでしょう。
なお、この任意後見契約は、公正証書にて作成されなければなりません。
将来、本人の判断能力が衰えたときは、契約の相手方が家庭裁判所に任意後見監督人選任の申立てをして任意後見監督人が選任されます。そこから、任意後見契約の効力が発生し、その任意後見監督人の監督の下、契約の相手方が任意後見人となって財産管理等契約で定められた業務を行います。
最近は、任意後見契約の締結と同時に、生活支援や療養監護・財産管理などに関する委任契約を締結し、当初は委任契約に基づく生活支援・財産管理などを行い、本人の判断能力低下後に任意後見契約の効力を発生させる「移行型任意後見契約」という形態の任意後見契約もよく選ばれるようになっています。

法定相続情報証明制度

「法定相続情報証明制度」とはどういうものですか?

平成29年5月29日より、全国の法務局(登記所)にて「法定相続情報証明制度」の運用が開始されました。
この制度は一言で言うと、相続手続において、「お亡くなりになられた方(被相続人)の法定相続人がどなたであるかを示す図(法定相続情報一覧図)の写しに、登記官が認証文を付して相続人の方に無料で交付する」という制度です。
被相続人名義の不動産の相続登記をする場合、または金融機関の預貯金等を解約する場合などにおいては、法定相続人がどなたであるかということを証明するため、戸籍謄本や除籍謄本等の束を、相続手続を取り扱う各種窓口に提出しなければならないことがよくあります。その際、代わりに法定相続情報一覧図の写しを提出することによって、戸籍謄本や除籍謄本等の束を何度も出し直す必要がなくなり、相続手続きの負担が軽減されることにつながるというものです。
このように、法定相続情報証明制度は、相続人と各種機関の相続手続担当部署の双方にとって、相続手続きの時間短縮につながる大変有用な制度です。ただし「一覧図作成のために必要となる戸籍謄本や除籍謄本は、当制度を利用する相続人の側ですべて収集しなければならない」という点には注意が必要です。
法定相続情報証明制度の利用申出は、相続人ご本人だけでなく、司法書士や弁護士等法律の専門家が代理人として行うことが認められています。戸籍の収集や法定相続情報一覧図の作成、制度利用の申出など、ご自分ですべてなさることが難しい場合にはそういった専門家に一度ご相談なさってはいかがでしょうか。